~ある日から、80倍~
今年の4月28日、環境省は放射能汚染された指定廃棄物(汚泥、焼却灰、麦わら、堆肥など)の基準値を1キロ当たり8000ベクレルに定めました。それまではキロ当たり100ベクレル以下だったものですから、基準値は80倍に緩和されたことになります。
指定廃棄物はその危険性から国が保管を義務付けて勝手には動かせないものですが、これにより「安全」と判断され、他所に動かし処分することが可能になります。
これまでも、震災で出たガレキなど放射性廃棄物は1キロ当たり8000ベクレル以下であれば、普通の廃棄物と同じ処分方法が取られています。
そして、今後は放射能汚染された土でも、キロ当たり8000ベクレルを下回っていれば公共事業に使えるとのこと。
「キロ当たり」という事は猛烈に汚染された廃棄物でも、他の物で薄めて基準値以下になれば良いということでもあります。
福島県楢葉町を訪れたとき、うずたかく積まれた無数のフレコンパック(家屋の解体や除染で出た放射性廃棄物が入っている)に圧倒されました。
「あれをどうするのか。私たちの見えないところへやって欲しい」との痛切な訴えを聞きました。
そして、国から出た答えがこれです。
ある日から、基準が80倍に緩和され、モノが動き出す。
キロ当たり8000ベクレル以下の廃棄物は、処理に当たってその費用は国から出されるとのことです。
“通常の廃棄物処理”ということならば日本全国どこでやっても良いわけで、その上で国が費用負担をしてくれるのならば、処理に関わる事業者には大きなビジネスチャンスかもしれません。
2020年にオリンピックが開催され、それまでに除染や廃棄物の問題をどうにかすると国は言っています。
そして、そのための方策が環境省から出されたキロ当たり8000ベクレル基準だといえます。
廃棄物は薄められて全国で処理され、確かに被災地から廃棄物は無くなるかもしれません。
しかし、何か大切なものが抜けています。
安全性です。
ある日を境に基準を80倍まで緩和するこの姿勢は安全をおざなりにしていないか。
もちろん、廃棄物の処理には向き合わなければなりません。